雑記72 – 「錯覚の科学」

 

最近読んだ本です。忘れないうちに書いておきます。
テレビで見た方もいらっしゃるかも知れませんが、ある実験をした人たちが書いた本です。
バスケットボールをする2つのチームのどちらかのパスの回数を数えさせる。という実験です。
実はその子と自体は実験には何の関係もなく、試合中にゴリラの着ぐるみを着た人がコートを横切り、中央でカメラに向かってドラミングをして、画面から消えてゆきます。
この実験では、そのゴリラに気づくか、気づかないか、ということが実験の主旨になっています。
そして、約5割の人がそのことに気が付きません。人によっては、さっきと違うビデオだ、と言いはる人も出てくるそうです。

 

要するに人間の錯覚、思い込み、ということを科学的に解明して行こう。という本です。
そして、人は思い込んだ情報に対して、とても強い自信を持つことも指摘されています。
車に乗っている最中に偶然目撃した事件の供述が、運転席に座っていた人と、助手席に座っていた人で全く違っており、どちらも自分の言い分が正しいと主張します。
そして、レイプ事件の被害者が憎しみを込めて覚えた犯人を裁判の時に自信満面で証言することで被告人が有罪になり、
後日発達した科学調査と、留置所内での真犯人の自慢話を元にそれらが覆った。などという話が書かれています。

 

思い込むことで、自分の記憶であることを錯覚する。という事を、ヒラリー・クリントンが大統領選の時に、ボスニアで銃撃された、と話した事を持ち出します。
そして、それらはどんな人間にも普通に起きうる事象であることを、事細かに証明してゆきます。
それでも、人々は自分は大丈夫。と錯覚するようです。

 

瓶の中に入ったキャンディーの数を目測で数える。という実験が面白く思いました。
複数の人間でチームを作り、それらに熟考して数を当てさせる。という方法では、全く当たらないそうです。
と、いうのも、始めに発言した人がそのチームのリーダーになる。という人間の性質があり、結局はその人の意見にまとめられてしまう。という状態になるそうです。
そして、一番実際の数に近づける方法は、第一印象で思った数字を各自が書き、それらを合計して求めた平均値がもっとも実際の数に近くなるそうです。

 

更にチームの弊害がを書きます。
雑学の問題を一人で解かせた時に、回答だけでなく、その回答の自信度も記入させた実験がありました。
同じ事を二人で行った場合、正解率は一人の時と変わらないのに、自信度は上がります。
三人集まれば文殊の知恵、というのは嘘のようです。正確には、三人集まれば文殊の知恵になったかのようだ。になるかと思います。要するになっていない。
そして、そういった効果が無謀な戦争へと突き進む原動力になることを指摘しています。

 

そして、サブリミナル効果やモーツァルト効果、といったものも現実には無いことを指摘します。
サブリミナル効果に至っては、研究者が研究費を稼ぐために考案したものだそうです。
そして、それらに簡単に踊らされるマスコミを弾劾します。
確かに現在のマスコミは面白おかしくすることが仕事なので、仕方ないのですが、受け取る我々も鵜呑みにしてしまう所があります。
特に単純な因果関係を結んでいるものを信じる傾向があり、何々が体にいい、とテレビで取り上げられるとその商品が翌日無くなります。
特定の成分を様々なものから抽出して摂取したほうが良い。という科学的な根拠はありません。
もちろん一つの食物の全体を食べると体にいい、という科学的な根拠はありませんが、歴史的な根拠はあります。
幕末の志士、江藤新平は御維新後体調が悪くなり、西洋人の医師にかかりました。
様々な検査をし、日頃の食事についての問診を聞いた後、栄養が足りていないのではないか。という診断を下しました。
それに対して江藤は「そんな事を言ったらご維新前はもっと酷いものを食っていた。」と言って大笑いしたそうですが、通訳が恥ずかしがって訳さなかったそうです。
なぜ昔の人達はあんなに元気があったのでしょうか?より高カロリーの食事をしている現代人では足元にも及びません。
現代医学が提唱する必要要素、というのもあくまでも参考程度で鵜呑みにしないほうが良いかと思います。病は気から、という部分もあります。

 

そして、最後に脳力トレーナーについて言及します。
どうもそういったものが他の能力に応用できる、という実験結果はなく、ましてや脳の老化を防ぐこともできないそうです。
脳の老化を防ぐ最も効果的な方法は、3日に一度45分のウォーキングが良い、ということが実験で分かったそうです。
じっと椅子に座ってゲームをしているよりも、体を動かしたほうが良い。散歩をすると頭がリフレッシュされるのも分かります。
やはり動物は本来動くもののようです。

 

基本的には直感は疑うべきだ。というニュアンスで書かれていますが、こんな実験もありました。
味のプロが選んだジャムの順位と素人の順位は一致するか、という実験で、初めは素人に熟考して選ばせたそうです。
ジャムの順位は1位、20位、40位(手元に資料が無いので大体の順位です)と大きく離れているので、当たりそうなものですが、全く当たらない。
その次に、ジャムを舐める前に、試験問題のことなどを考えさせてから、すぐにジャムを舐めさせて、順位を決めさせたそうです。
そうすると、プロが選んだ順位に近づくそうです。
感覚的なことに関しては、考える、という行動が余計なものになるようで、無心で答えると良いようです。
うーん、深くて難しいです。しかし、面白い。

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