雑記75 – 「虜人日記」「日本はなぜ敗れるのか-敗因21ヵ条」


どちらの本も養老孟司さんがどこかで引用されていたので、読んだ本です。
随分昔の事なので、内容がおぼつきませんが前回、人の本質という事を書いたので、これを思い出しました。

 

前者の本に関して、養老さんの引用の仕方は、人の本質とは環境によって変化するもので脳の作用に相当する。というような事を書かれていたかと思います。
といいますのは、その本の内容に、太平洋戦争当時フィリピン諸島のジャングルでアメリカ兵に見つからないように、とひたすら奥地へ進む日本兵に取って、
最も恐ろしいことは友軍に遭遇することだったそうです。
食料の無くなった彼らは友軍を殺して食べた、という記述があります。その点で著者は過酷な環境下で人間の本性を垣間見た、と書かれております。
本を読んでみると、その内容はあまりにも凄まじく、想像を絶するものがありました。
この本をそんな事の引用に使うのか、と始めは驚きの気持ちを持ちましたが、であるがこそこれを使う、と考えを改めるようになりました。
人間の脳は状況により変化し、残酷にも悲劇的にも喜劇的にも成り得ます。それをしっかりと把握するには適している。ということかと勝手に解釈しております。

 

さて、本の内容です。
著者は軍人ではなく、民間人で軍部の要請から軍に協力するようになった方です。
派遣されている台湾からの帰国、というところから始まります。3隻の船で帰国する日本人たちに混じり帰国の途についたそうです。
家族と離れる、ということから他の乗客とチケットを交換し、同じ船で帰国されたそうです。
その途中、すでに制海権を失っている海でアメリカの潜水艦に見つかってしまったそうです。魚雷が発射され、3隻のうち2隻が沈没、著者が乗る船も魚雷が当たったそうですが、運良く不発弾だったようで助かっています。
この本を通して、そのような話が当然のようにいくつも出てきます。生かされている、という気持ちが沸き起こるのも必然のように思います。

 

現地についても、現地では物が無く、現場の人間に掛け合うと仕事はない。という話になるそうです。招かれて来てみれば、この有様。という状況が続きます。
本の表紙にもなっておりますが、著者は日記を書き続け、挿絵も描かれたそうです。どこかしらユーモアのセンスを感じさせます。
過酷な環境にあっても独特の機知で前向きに辛抱強く対処されている姿が思い浮かばれます。
自分で何とかしよう。と独自に工場を作る、といったこともされたようです。誠実さと辛抱強さに胸が打たれます。

 

その後戦争の状況が酷くなり、日本軍は転進と称してジャングルに逃げ込みます。全く無策であることが分かります。
そんな環境で衛生兵として従軍していたそうで、その立場を利用し、木の棒の先にに綿を括りつけ、それを薬品で浸して日記を書き続けたようです。
日記が進むに連れ残りの食料後何日、と書かれた日数が減って行き、ついには無くなります。
そんな中命拾いをしたのが、アメリカ軍が放棄した偵察用の基地だったそうです。その基地は偵察用であるにも関わらず、設備が整い食料の為に芋が植えられていたそうです。
著者を始め、そこにたどり着いた人が必ず行うのは、素手で芋を掘り、泥のついたその芋を無心で貪る事だったそうです。
そして、その後は捕虜として収容所での生活が描かれます。

 

もちろん本の内容は間違いなく凄いもので、日本人であれば一度は読んでおいたほうが良いのではないか。と思ってしまうものです。
しかし、その編集後記に更に驚かされることになりました。
編集後記は著者のお子さんが書かれたそうです。
生前戦争の話はおろか、日常の会話も少なかった。と書かれております。
父である著者が亡くなられ、遺品を整理している時に見つけたのが貸し金庫の鍵だったそうです。それを開けると骨壷が収められており、そこにこの日記が隠されていたそうです。
もう一つの本を書かれた方が書いておりますが、当時は身ぐるみ剥がされて帰されたそうです。
部下の遺品を持ち帰ろうとした人が、それを帰国時に取り上げられ、その後遺族に激しく問い詰められる人の話を紹介しています。仕方がなかったようです。
「虜人日記」の著者の機知は骨壷に入れれば取り上げられることもあるまい。と発想したのだろう、と書かれてあったかと思います。何とも凄まじい読みです。本気であることが伺えます。

 

生前尊敬することも無かった父親だったそうですが、それを機に大きく変わられたそうです。
何とも凄まじさを感じてしまいます。腹に仕舞ったものは死んでも出さない。しかし、後世に伝えてゆかなければならない。
そんな壮絶な想いを感じてしまいます。
どちらももう一度読み直したい本です。

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