雑記83 – 「構造デザイン講義」

建築の本です。
養老孟司さんが新聞で書評を書かれていたので、読みました。
書評の内容は覚えていなかったのですが、読み進めてしばらくして一部思い出しました。

 

うろ覚えですが、
講義の内容を本にした、という形態なので仕方が無いのだろうが、(笑)が多い。
冗談を言う時は(笑)を付けないと冗談であると受け入れてもらえない世の中になったのだろう。(笑)
というような内容でした。読んでいて思わず吹き出したことを思い出しました。

 

それはともかく、内容は現場で散々やられていた方が書いたもので、養老さんも仰っておりましたが、
とても現場で来て、身体的なものとなっております。建築に興味がなくても面白い。
組積造と呼ばれる西洋建築の大本の石を組んで行う土木建築の説明から始まり、現代のコンクリートとスティールで行われる建築へと時代を追って解説されております。
ご自身、長らくそういった建築に関わって来たようで、内容が現場的で大変興味深く読ませて頂きました。

 

コンクリート一つをとっても、時代を経るに従い、現場で人が捏ねるという工程から、ミキサー車での大量生産に移り、
低価格が実現されていったそうですが、質は明らかに落ちていったそうです。なんだかよく聞く話です。
そして、工場でブロックを作るプレキャスト、と呼ばれる手法が出てきたことにより、品質は良いが、設計がきちんとしていないと難しい工法などもできたそうです。

 

解析についても書かれております。
建物の強度計算です。一昔前まで人が何度も計算を行い確認していたものが、現在ではコンピュータによって行われるそうで、
それにより、遥かに大量の解析が可能になったそうです。しかしコンクリートと同じように質が落ちたことは偽装問題によって明らかになりました。

 

書籍の半分以上をこういった現場レベルでの話を交え、歴史を交え建築というものについて語られておりますが、
最後に木造建築について、語られております。
そして、今まで説明された西洋建築を「無矛盾系」と定義し、それは整合性の高い構造体の中に1個の矛盾があると、あらゆる外力がその矛盾一点にかかり壊れる危険性がある。
それに対して、木造建築というのを「多矛盾系」とし、各ジョイントに矛盾があることで構造体として強くなる。と説明されております。
阪神淡路大震災では、多くの木造建築が倒壊したことが報道されましたが、どうやらそれらは店舗型の木造住宅だったようで、間口を広くとり、耐震設計の弱いものだったそうです。
そして、地震にも個性があり、鉄筋コンクリートであっても、むしろ鉄筋コンクリートであるから、そういった個性に対応できずに倒壊している事実を説明されております。

 

以前、建築をやっている方に聞いた話を思い出しました。
日本の建築技術はとても優れているそうですが、現代においては、各部屋に蛍光灯があるのが当たり前で、エアコンがあるのが当たり前。という事が前提になっている。
本来建築というものは地域の特性、採光、換気、様々な条件に合わせて作っていた。自分は何を作っているのか分からなくなった。
と、仰っておりました。
そして、この本の著者も現場の空洞化を指摘しております。
コンピュータ任せ、極端な画一化により、現場で柔軟に動ける人が少なくなっているそうです。うーん、なんだか今っぽい。

 

また、個人的に興味深かった点は、イギリスのミレニアム・ブリッジについて書かれていたところです。
この橋はイギリスが威信を懸けて作ったものでしたが、開通式当日、両岸から人が橋を渡り始めるてしばらくすると、橋が大きく左右に揺れ始めました。
もちろん解析は行なっていたそうですが、橋は封鎖され原因の究明が始まりました。
そして、毎秒1回の定期的な横揺れに対して弱いことが分かったそうです。毎秒1回といえば、人の歩みがそれに相当します。
人が歩く時に発生する微量な外向きの力が橋を伝って増幅し、最終的には橋全体を蛇のように大きく揺らせる原因になったそうです。要するに同期現象です。
この本の著者は見るからに強度が足りていないことを指摘されております。流石です。
デザインを重視するあまりに強度を軽視した結果のようです。

 

多矛盾系、いい言葉ですね。とても気に入りました。日本っぽいです。
理屈は分からないけど、それでいい。大したものです。

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